京阪80形82号について、元保存団体のトップとして思うこと。
2021年09月11日 12時00分 月齢:4.5[五日月] 潮汐:中潮
3年前に投稿 | 鉄道全般 | 10件のコメント
5分ぐらいで読めます。
2021年9月8日、朝日新聞(滋賀版)に掲載されました。いや、顔写真撮るんだってわかってたらもう少し小綺麗にして取材受けたのに! 髪の毛ボサボサだしヒゲは剃ってないし、なんちゅう姿を世の中にさらしてしまったんだろ。
さて、この記事を目にした人の中には熱心に協力を申し出てくれている方も思いのほかおられたので、順次連絡を取っていきたいとは思っているんですけれど、少し時間をくださいませ。
で、せっかくの機会なので現状を紹介するとともに、エピソードのひとつでも書いてみようかなと思い立ったわけです。本当はながーく書いてもいいんだけど、あまりここで書いちゃうとリアルで会ったときに喋るネタがなくなるというセコい考えから出し惜しみすることにしました。
まずは画像たち。とくにコメントをつけないので、画像から現状を見てやってください。まずは外側。
とくに東側(錦織車庫に留置しているときは西側だった)の塗装の剥離が重傷で、日光が当たり続けるとこうなるんですね。
いちど京阪さんが全塗装しなおしてくれたのですが数年でこのザマです。いったん錆びた鉄板は、下地処理が難しいのかもしれません。サンドブラストで錆を落として、錆止め塗って、パテ塗って、パテ研いで、色を合わせて上塗りして…これを塗りなおすのはとても大変なことは想像できます。
唯一の救いは、だいたいが手の届く範囲であること。もし電気を引くことができたら、ラストアレスターを導入してみたい(鉄道車両に効くのかはわからないけど)。塀の前に電柱があり、電気の引き込みはできるはず。
車内はこのようになっていました。
虫の死骸等はほとんどありません。虫にとっても過酷すぎて生きていくのは困難でしょう。エサも何もないしね。2段式窓は隙間が大きく、雨水が入って座席のあちこちを傷めつけていました。
この地を終の棲家に選んだ、妹尾友希子。
京阪の錦織車庫から追い出され(永続的な保管場所がなかなか見つからず長年にわたり錦織車庫に留置させてもらったことには本当に感謝していますが)、この地に来たとき、所有者(移動直前に彼女に所有権を譲渡した)の妹尾友希子はいろいろな構想を描いていました。
- 電気・水道・通信回線を整備し、小屋を作ってトイレも作り、管理人を常駐させたい(または公開時のみ管理人を置きたい)。
- ライブカメラで四季折々の姿を配信したい(防犯もかねて)。
- 直射日光は良くないので、屋根を作って車両を覆いたい。けどあまり低いとせっかくのロケーションが生きないので、できるだけ高く作りたい。
- 「煤、別にここに住んでくれてもいいよ。通勤できるんなら。」と言ってくれた。
そんな構想を何ひとつカタチにしないままに、彼女は突然この世を去りました。
もうひとり、黒田一樹。
「乗らずに死ねるか!」「すごいぞ! 私鉄王国・関西」等の著書を残し、凄腕の実業家であり、語学と美術の知識に長け、最初期メンバーとして2人で京阪の事務所に乗り込んでいった戦友。彼もまた病魔に侵され、彼女の死から1年も経たないうちに、この世を去りました。キザでインテリで上から目線で自信家で標準語で、「あーコイツにはかなわないな、いろんな意味で。」と、ふだんめったに抱くことのない感情にさせてくれた奴でした。そんな彼の見舞いに東京に行ったとき最後に彼から聞いた言葉は「あー死にたくないなー」だった。それから2週間後…
NPOの理事3人のうち、この2人が死んじゃったらもうムリだよ。しかも2人とも(自分を含めたら3人とも)40代。どういうことよ? 次はもしかして自分の番?!
そんないきさつがあり、NPOの要件を満たさなくなったので滋賀県に法人格を取り消してもらいました。解散ではありません。だって解散の決議ができないもん。
それが再び着目される日がくるとは…
おかげさまで多くの反響があり、本当に嬉しいなと思います。が、鉄道車両を保存するのはクルマや鉄道模型とはまるで違う。そのことを思い知らされたのも事実です。誤解を恐れずに書くと、優先度は
- 財力。お金はとにかく何をするにも必要です。結局お金なんです。でもお金だけじゃないのも事実。
- 時間。今住んでいるところからクルマで片道2時間、そんなに頻繁に通えません。滋賀県民なら克服できるかも。
- 情熱。個人的には、動態保存車や現役の車両は生き物だと思っていますが、動かない鉄道車両は死体です。死体だから放っておくとどんどん腐っていきます。
「もういちどNPO作って盛り上げよう。俺が理事長になるぞ。」「株式会社にして何か商売できたら。宿泊できるようにしちゃおう。」など、いろいろな考えが集まったら、もしかしたら新たな時代が来るかもしれません。
おまけ。
- 実は、現役時代の80形に乗ったことがないのだ。もちろん見たことは何度もあるけれど、蹴上などの途中駅に行くことがなかったので、「変な色の電車」くらいにしか思っていなかった。
- 実は、特定非営利活動法人「京津文化フォーラム82」という名前がそんなに好きではない。黒田一樹のほぼ独断で決まったけれど、「なんか…ダサくない?」と思った(思っている)。ゴメン、地獄に行ったら土下座して謝るから待ってて。
- 実は、いまだに駅名を全部言えない。半分も言えない。覚えられない。ついでにこの件に関わったたくさんの人の名前も顔も覚えられない。もちろん瞬間的には覚えているんだけど記憶が続かないのだ。強烈に脳細胞に焼き付いた人以外はすべて消去されていく。困ったもんだ。
それから…先日保存場所を訪れるために下調べしておこうと思ったけれど、その場所をすっかり忘れていて、クルマ乗り換えたからナビにも登録されていない。Google Mapで2時間ほど探しまくった。ホント焦ったわー。思っていた場所とは全然違う場所だったよ。危なかったー。
古い記事・新しい記事
- 古い記事 [2020年04月15日]
- ← 休業要請開始後の新幹線の惨状!
- 新しい記事 [2021年11月21日]
- → 京阪80型82号の外板修繕作業はじめました。
ひごほからのコメント | 2021年09月12日 #
Twitterから参りました。
現状の画像ありがとうございます。
修理箇所やはりかなり広範囲にわたりそうですね。しかしお金と人が集まればですが、できない範囲でもないと思います。
重ね重ね、もしプロジェクト再結集・再始動の降りはお声かけください。
どうぞよろしくお願いいたします。
こういちからのコメント | 2021年09月12日 #
煤さんは地獄には行けんから、一樹さんに謝る機会ないかもよ。
煤からのコメント | 2021年09月12日 #
ひごほ様
いろいろと反響がありまして、本当に「プロジェクト再結集・再始動」の可能性が出てきました。その際にはぜひお力添えをお願いいたします。
煤からのコメント | 2021年09月12日 #
こういち様
いやいや2人揃って地獄めぐりを堪能しますヨ。
認めてくれる人も多い反面、敵もいっぱいいますからねー。
yswからのコメント | 2021年09月13日 #
厳しいことを申し上げるようですが、もはや公開は諦めた方が宜しいのではないでしょうか。
2ch鉄道板で京津文化フォーラム82が発足した当時の事を知る者ですが、長年にわたる錦織車庫での保管、私の知る限りでは譲渡当初と高島への陸送直前の2度に渡り京阪電車の手で再塗装がなされたり、結局のところ保存活動は京阪電鉄の厚意によるものが大きかったように思えます。
現在お住まいの場所から保存地まで2時間かかる、電気も水道もない場所に置かれている、費用的な問題などから定期的な維持管理は厳しいものがあると思われますので、シートで車両全体を覆うなど保全措置を講ずれば放置状態でもかなり車両の寿命を延ばせるかと思います。
また存在を公開してしまった代償として心ない盗り鉄による部品盗難も心配です。
今の京阪のスタンスとしては81のカットボディがあれば事足りるようですが、もしあと数十年この車両を残すことが出来れば変化があるかもしれません。
京津82を長年保存してくださりありがとうございました。一日でも長くこの車両を残していただけたら幸いです。
煤からのコメント | 2021年09月13日 #
ysw様
コメントありがとうございます。
高島市へ移動した当初は、ブルーシートで全体を覆っていたのですが、「ブルーシートの耐久性が思いのほか乏しく、風化や破れが激しい。」「台風のときなど、ブルーシートの飛散による近隣への二次災害等の懸念がある。」「ブルーシートで覆う作業を行う際には高所作業があり、また複数の人手が必要。」という3つの問題点がありました。このためある時期から社紋や車号のみを小さめのブルーシートで保護するようにしたのですが、これもいつの間にかなくなっていました。頑丈そうに見える鉄道車両ですが、耐久性においては建築物と全然違うことを理解しました。
そのような経験から、もし再塗装するのであれば屋根の設置は必須だと思っています。屋根自体もかなりの高さになり、かつ柱をできるだけ少なくするためにしっかりとした基礎工事も必要となることから、構造計算や建築確認申請等も含めてプロにお任せするしかありません。
盗り鉄についても無視できない部分ですが、盗り鉄に言いたいことは「鉄道車両の一部の部品、たとえばネジを手に入れても、それはただのネジにすぎない。それらひとつひとつのの部品が組み合わさって、はじめて鉄道車両になるということをよく考えてほしい。部品がなくなっていくほどに、車両本体はどんどん不完全な状態になっていく。」との思いです。
「あきらめたらそこで保存終了ですよ…?」
ということで、もう少しだけ悪あがきさせてください。
yswからのコメント | 2021年09月13日 #
返信ありがとうございます。
ブルーシートの件、そうだったんですね。
1銭の寄付もしてないくせに無責任なことは言えませんが、美濃太田の保存車両で使われていたような頑丈なシートなどで覆うなどいかがでしょうか。
「保存」ではなく「保管」でもいいと思います。
シートを掛ける作業など募集があれば参加させていただきます。
国鉄車両保存検討会(仮)からのコメント | 2021年09月16日 #
こんばんは 突然のご連絡失礼します。
私達保存会は、鉄道車両の保存をクラウドファンディング等を通じて行おうと検討しています。 そこで検討していただきたいのですが、 もしよろしければ、京阪80型を譲って頂ければと思います。
とても貴重な京阪80型を、保存していきたいと思っております。
もしよろしければ返信よろしくお願いいたします。
煤からのコメント | 2021年09月18日 #
ご連絡ありがとうございます。現在所有権は妹尾さんの親族の方にあるので、お譲りするかどうかは即答できないのですが、「こんな保存団体さんがおられますよ」と連絡をつけることはできますので、今までの保存活動実績や具体的な計画をお知らせください。
コメント欄でのやり取りは適切ではないと思いますので、メールを送らせていただきますね。よろしくお願いいたします。
煤◆z51.......からのコメント | 2021年10月02日 #
保存に向けた活動のためのウェブサイトつくりました。
https://82ch.net